自衛隊は防衛省に属しており、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊で成り立っており、日本の安全のために日々勤しんでいます。
有事の際は日本を唯一守ってくれるだけではなく、大きな自然災害があったときには救助活動などにも取り組んでいることで、人気のある職業です。
「自衛隊に入って、自衛官になりたい!」
人気の高さから自衛官を志す人もたくさんいます。
そこで気になることの1つが自衛隊の仕事内容です。
自衛隊になりたいと思う気持ちがあるものの、自衛隊はどんな仕事をするのか、その仕事内容で入隊するかどうか考えたい気持ちも分かります。
今回は自衛隊の仕事内容について詳しくまとめてみました。
自衛隊は陸・海・空の3つの隊からなりますが、共通してする仕事もあれば、その隊にしかない仕事もあります。
自衛隊の仕事内容は過酷?
自衛隊の仕事内容は過酷といってもいいでしょう。
一般的なデスクワークのような仕事もありますが、何より激しく体を動かす仕事の方が多いです。
また最初に経験する訓練では、がっつり体を使いますので、極度の運動嫌いの方には向いていないかもしれません。
ただ誰しもが通る訓練を過ぎたら陸・海・空でそれぞれの仕事内容があります。
それぞれの仕事内容は人によって楽に感じたり、きつく感じたりするでしょう。
自衛隊の主な仕事内容
まずは陸・海・空のどの自衛隊でも共通して行う仕事内容についてまとめてみました。
防衛出動
自衛隊の仕事として一番イメージが強いのは防衛出動でしょう。
日本が外国から武力攻撃を受けた場合や受ける危険性が高い場合に、内閣総理大臣が自衛隊の出動を命じることができます。
出動を命じられた自衛隊は防衛のために武力を行使することができるようになり、戦うことが可能となるのです。
また日本が攻撃された場合でなくても、日本に危険性があるような武力行使がどこかで行われたら、内閣総理大臣は出動を命じることができます。
ただこれまでに防衛出動が命じられたことは一度もなく、自衛隊が武力を行使したことは一度もありません。
しかし万が一の攻撃に備えて対応できるように、自衛隊は常に訓練を欠かさずに行っています。
この訓練が主な仕事内容とも言えるでしょう。
救助活動
自衛隊は国民の救助のために出動を要請されることもあります。
地震や台風などの自然災害やテロなどによる人為的災害が起こったときに、消防の力だけでは足りない場合は自衛隊が救助活動のために災害派遣されるのです。
これまでには地下鉄サリン事件や日本航空123便墜落事故の際にも出動要請されていました。
最近では東日本大震災で救助活動のために災害派遣され、約50日間連続で災害派遣が行われており、大規模な救助活動であったことは有名です。
この災害派遣で自衛隊の仕事内容について知った人も多いでしょう。
日本は地震が頻繁に起こり、自然災害が多い国ですので、今後もこれまでと同じように外国から日本を守る仕事より、災害時に救助する仕事のほうが多いかもしれません。
治安出動
自衛隊は国外の敵から日本を守るだけではなく、日本国内で内乱が起きたときなどに治安維持を目的に出動要請されることもあります。
日本国内の治安活動は警察に一任されていますが、警察の力だけでは対応しきれないと判断された場合に、自衛隊が治安維持のために出動するのです。
内乱などを制圧するイメージがないのも当然で、防衛出動と同じように、日本ではこれまで治安出動を命じられたことはありません。
大正時代に起きた学生運動のときも警察だけで対応し、自衛隊が出動することが無かったことから分かるように、警察が機能しなくなるくらい大きな内乱が起きない限りは治安出動されることはないでしょう。
おそらく外国から攻撃を受けて防衛出動する確率よりも治安出動する確率のほうが低いと言えます。
国際的な平和協力活動
自衛隊は日本を守ることが第一の目的として働いていますが、場合によっては海外派遣をされることもあります。
もともと海外派遣は日本国憲法に記されている「必要最少限度の実力」を超えるものとして避けられていました。
日本の自衛隊は専守防衛を鉄則としていますので、もし海外に派遣されて武力行使を行ってしまったら、平和主義を崩す恐れがあったからです。
そのため最近では武力紛争がに巻き込まれるリスクが低いところを中心に派遣しており、救難や輸送などの後方支援に徹して、国際的な平和協力活動を行っています。
つまり復興支援や地雷の除去などをしており、直接の武力行使を目的としない範囲で海外支援をしているのです。
2017年現在でも南スーダンに陸上自衛隊が派遣されています。
これまでを見ると日本は安全なことが多いため、防衛出動や治安出動よりも海外派遣のほうが仕事内容としては今後も可能性が高いかもしれません。
海外派遣は希望制による所も多いため、もし海外に行きたくなければ拒否することもできます。
ただ海外に行きたい人は多く、希望をしても選ばれない人もいるぐらいですので、海外派遣はとても人気のある仕事内容です。
配属先で変わる自衛隊の仕事内容
自衛隊は陸上自衛隊と海上自衛隊、航空自衛隊の3つの隊に分かれており、当然ながらそれぞれで行う仕事の内容は違います。
また当然のことながら、陸上自衛隊しかやらない仕事もありますし、それは海上自衛隊や航空自衛隊も同じです。
それぞれの自衛隊で仕事の中身は違いますので、自衛隊ごとにまとめてみました。
陸上自衛隊
陸上自衛隊は基本的に陸戦を特化した自衛隊です。
日本は島国であり、他国に進行することはありませんので、海自や空自に比べると、最も安全な部隊だと言っても過言ではありません。
陸上自衛隊が戦うとなったときは外国が日本本土に侵攻しているときですので、そのときには海自と空自はおそらく壊滅状態です。
日本の最後の砦とも言われている陸上自衛隊は陸戦ですので最も体を鍛える部隊だと言っても過言ではありません。
陸上自衛隊は体力的には一番きつい仕事内容だと言えるでしょう。
そんな陸上自衛隊には16の職種があり、それぞれに分かれて働いています。
まず武器を扱うのが「普通科」「機甲科」「野戦特科」「高射特科」です。
■普通科はいわゆる歩兵です。
■機甲科は戦車部隊のことを言います。
■野戦特科は火力戦闘部隊として機甲科とは違い、広域的に制圧できるだけの高い火力兵器を使っての制圧がメインです。
■高射特科は対空戦闘部隊としてミサイルを使って、相手の航空機を陸から撃ち落とす行動を執ります。
普通科は銃火器を扱って前線で戦いますので、最も人気のある職種です。
機甲科は戦車乗りが主な仕事ですが、確実に戦車に乗れるとは限りません。機甲科の中には偵察隊という部隊があり、バイクに乗って地雷がないかなどの偵察をします。
戦車やバイクに乗りたい人は機甲科を目指すと良いでしょう。
また情報の伝達や設備などの面で後方支援をメインとするのが「航空科」「情報科」「施設科」「通信科」「武器科」「需品科」「輸送科」です。
■航空科は空軍の戦闘機ではなく、ヘリコプターなどを使って航空戦闘や偵察、物資の輸送などを行います。
■情報科は情報に関する専門技術をもっており、情報の収集や地図、航空写真などの配布を行って、各部隊の支援をする仕事です。
■施設科は戦闘部隊を支援するために、施設器材を使って陣地を構築します。例えば歩兵部隊などが戦いやすいように土嚢などで障害を作る仕事をします。
■通信科は特殊な電子器材を使って、部隊間の通信を中継します。この情報伝達によって部隊間で息を合わせた迅速な行動を取ることが出来るのです。
■武器科は技術面に強く、武器の補充や整備を行ったり、不発弾の処理をしたりします。
■需品科は食料や燃料、被覆などを管理する仕事です。
■輸送科は大型車両を使って部隊や戦車、重火器などを輸送します。
陸上自衛隊の航空科はヘリコプターが好きな人や航空手当が出るので人気のある職種です。
ただヘリのパイロットは任期もあるため、狭き門であることは間違いありません。
施設科や輸送科は他の職種と比べると、資格や免許を取りやすい職種なので人気です。大型自動車免許など10種以上も取ることができますので、定年後に再就職を考えている人は施設科を希望しておくと良いでしょう。
また隊員の労働環境や私生活を整えるのが「会計科」「衛生科」「警務科」「化学科」「音楽科」です。
■会計科は自衛隊員の給与などの会計業務を仕事して行います。
■衛生科は治療や医療施設への移送などを行ったり、部隊の健康管理などの衛生面のバックアップが仕事です。
■警務科は自衛隊員の規律違反を防止するなど自衛隊の秩序の維持をメインに仕事としています。自衛隊の警察と言うと分かりやすいかもしれません。
■化学科は放射性物質などで汚染された地域の偵察をしたり、汚染された人や物の除染をしたりしています。
■音楽科は演奏を通じて自衛隊員の士気を高める仕事の他にも、警務科部隊の援助が仕事の1つです。
音楽科は吹奏楽部出身ぐらいのレベルでは難しく、音大を卒業するレベルの即戦力が求められています。
化学科も音楽家と同様に元々高い素質を持っている人が入隊することが可能です。大学で理系一筋でやってきたようなタイプが多く、研究職に近いところがあります。
海上自衛隊
海上自衛隊は海の上で仕事がメインであり、1年の半分は海の上で過ごす自衛官も多いです。
ただ最近は自ら乗組員を希望する人は少なく、陸上勤務が多い航空隊や他の後方配置される職域の人気が高くなっています。
中には絶対に艦艇や航空機に乗らない職域もあり、海上自衛隊と言っても裏方支援に徹すれば、海上に長くいる生活をおくるとは限りません。
海上の前線で仕事をするのは「射撃」「水雷」「機雷掃海」「潜水」の4つです。
■射撃はその名の通り、護衛艦などで砲やミサイルを操作し、攻撃をします。
■水雷は魚雷などの水中武器やソナーなどの水中検索をしており、攻撃と潜水艦の捜索などが仕事の主な内容です。
■機雷掃海は機雷探知機などを使って機雷の処分や調整を行っています。
■潜水はアクアラングと呼ばれるダイビング器材を用いて潜水し、機雷などの爆発物を処理する仕事です。
また海上で前線に出ている自衛隊員を裏方で支援しているのは「航海・船務」「通信」「気象・海洋」「機関」「艦船整備」「情報」です。
■航海・船務は航海に関する業務を実施したり、レーダー・電波探知装置などを使用して戦術活動を実施したりします。
■通信は陸上基地や艦艇、航空機との通信や暗号の作成、翻訳などが主な業務です。
■気象・海洋は天気図などを作成したり、気象や海洋に関する情報を伝達することを仕事としています。
■機関はエンジン発動機などの運転や整備などを行い、火災や浸水などが起きた場合はそれに対処します。
■艦船整備はメカニック面の仕事内容であり、修理や整備、補給などの仕事です。
■情報は陸自と同じように情報資料の収集や情報の配布などをメインに行います。
他にも艦に搭載しているヘリコプターに搭乗する仕事である「飛行」や空港などに勤務している「航空管制」「航空機整備」などもあります。
こちらの職域は海上自衛隊の中でも人気です。
■飛行はヘリコプターなどの搭乗員としての飛行任務を遂行します。
■航空管制は空港や飛行場周辺で離着陸する航空機を無線やレーダーなどを使った誘導が業務です。
■航空機整備は航空機の機体やエンジンなどの整備や修理、補給を行います。
最後に陸自と同じように隊員の労働環境や私生活を整える「経理・補給」「法務」「施設」「衛生」「音楽」などの職域があります。
■経理・補給は海上自衛隊員の給与や旅費などの計算をしたりなど陸自で言う会計科にあたる内容の仕事をします。
■法務は訴訟や損害賠償、損失補償などに関する仕事です。
■施設は国有財産の管理や運用、施設器材や施設車両を使っての建設業務などの設備的な仕事をします。
■衛生は病院での医療や自衛隊員の健康管理を主な仕事とするとともに、戦士に関する調査や研究も行っています。
■音楽は隊員の士気を挙げることを業務としており、海上自衛隊の音楽は広報活動に関する業務も行っています。
音楽は陸自と同じように、音大卒業程度のレベルを求められることが多く、オーディションは激戦区です。
航空自衛隊
航空自衛隊も陸自と海自と同じような職域の分け方がされています。
航空自衛隊ということもあり、人気な仕事内容は航空機に関わる職域です。
パイロットはもちろん、航空機の整備などは人気が高く、逆に陸自や海自でもあるような警備などの職種はあまり人気がありません。
まず空での戦闘行為に関する職域が「飛行」「航空管制」「要撃」「高射運用」「通信電子」「武装」「整備」です。
■飛行は戦闘機や輸送機、救難機を操縦して防空戦闘や人員、物質の輸送、救難などの活動を行います。
■航空管制は各航空自衛隊の飛行場にて航空交通の管制業務が仕事です。
■要撃は日本の領空を常時監視しながら、戦闘機の管制も行います。
■高射運用はミサイルを使って侵攻してくる航空機を撃破することを任務としており、陸自の高射特科に似ています。
■通信電子は航空基地やレーダーサイトなどで使用する通信電子機器を取り扱う仕事をします。
■武装は戦闘航空団に属しており、航空機に搭載する武器弾薬に関する仕事をしています。
■整備は航空機に搭載している電子機器やエンジン、地上レーダーなどの器材整備が主な仕事です。
他にも航空自衛隊には「プログラム」「気象」「施設」「衛生」「法務」「警備」「音楽」「会計」「補給」「輸送」などの職域があります。
■プログラムはコンピュータの操作やプログラムの作成を行っています。
■気象は気象観測を行い、天気図を作成する仕事です。
■施設は基地施設の建設や維持、管理などの業務を行ったり、航空機事故があった場合には消防救難活動を行ったりします。
■衛生は陸自や海自と同じように隊員の衛生管理を行います。
■法務は海自の法務と同じように法制面の業務が主な仕事です。
■警備は基地の施設や物品、隊員の安全を守る仕事をします。
■音楽は陸自や海自と同じように音楽隊がおり、隊員の士気を高めます。
■会計は陸自や海自と同じように給与の計算や出張の旅費計算業務などのお金の管理が仕事です。
■補給は航空自衛隊において使用されている全ての物品の整理や保管をしたり、部隊に出荷する作業も行います。
■輸送は車両を使って人や貨物を輸送する仕事です。
自衛隊の仕事内容はどれも楽ではない
自衛隊の仕事内容は、陸・海・空のそれぞれで違いがありますし、どの隊もその隊ならではの過酷さがあります。
体力面で大変なのはもちろん、精神面も過酷なことで有名です。
東日本大震災の救助活動のときには一日に数十体規模の遺体を見たり、原型がわからない遺体などを見たりすることも多く、度重なる遺体処理で精神的ケアが必要な自衛隊員も多くいました。
さらに新聞で報道されていた話ですが、担架がない場合は遺体を背負って運ぶこともあったり、運ぼうとすると手足が取れてしまうこともあったという話もあります。
また被災地にいる人には温かい食べ物を配りますが、自衛隊員は缶詰ですので、なかなか疲れを取る暇もありません。
いざという時はキツイこともしなければいけない仕事です。
決して楽な仕事ではありませんので、本当に自衛隊員になりたいと思っている人でないと勤まらない仕事とも言えるでしょう。