「自衛隊員になりたい」
震災などの被害があってから、救助活動をしている自衛隊員の姿を見て、自衛隊に志願する人は増えてきました。ただ自衛隊になりたいと思っても、どうやったらなれるのか疑問もあります。
そこで今回は自衛隊に入隊するためにはどんなことが必要なのか、学歴ややりたい職種ごとにまとめてみました。
自衛隊員になるには必要な事があるの?
自衛隊は日本の唯一の軍事組織であり、かなり大規模な組織です。
大規模な組織であるがゆえに自衛隊になるには様々な方法があります。
ただあなたのやりたい仕事内容によっては特別な資格が必要であったり、特殊な入隊の仕方をしなければいけない場合もあり、様々です。
基本的に学歴関係なく、自衛官になることはできますが、学歴によって状況が少し変わる場合もあります。
たくさんの方法がありますので、これからあなたが自衛官になるにはどうすればよいのか、いくつかの可能性の中から選んでいくと良いでしょう。
自衛隊になるには学歴と関係ある?
自衛隊に入隊するためには学歴は関係ありませんが、入隊の仕方は少し変わります。
それぞれ中卒、高卒、大卒の場合別にまとめてみました。
中卒で自衛官になるには
まず中卒で自衛官になるには主に2種類のパターンがあります。
中学校の卒業と同時に入隊する場合と18歳以上で最終学歴が中卒の人が入隊する場合です。
中学校を卒業と同時に自衛官になる場合
中学校を卒業すると同時に自衛官になる、つまり16歳で入隊する場合は「陸上自衛隊高等工科学校」に入学する必要があります。
自衛隊は基本的に18歳以上でないと入れないため、中学校を卒業してすぐに自衛隊へ入りたいのであれば、この方法しかありません。
陸上自衛隊高等工科学校では、高校の普通科と同じような教育を受けながら、自衛官になるために必要な技術も一緒に学びます。
つまり高卒で自衛隊に入隊してくる自衛官よりも一足早く自衛隊のための教育を受けており、現場で叩き上げられたエリートとしての扱いとなるでしょう。
卒業後は高卒の資格も得ることが出来るため、一般の高校よりも一足早く自衛官としての素養をつけることができます。
また高卒の資格だけではなく、そのまま防衛大学に進学したり航空学生になったりするための受験資格も得ることができますので、中卒と言っても、将来は幹部コースを進むことが可能です。
さらに学費はかからずに毎月約9万円の手当が出ますので、昔は家が貧しくて進学が厳しい人が進学するケースがよくありました。
しかし陸上自衛隊工科学校の倍率はかなり高く、10倍以上がほとんどです。ちなみに2015年では16倍でした。
さらにいじめが起こることも多いので、精神的に強くなければ卒業することも難しいかもしれません。
特に仕事ができない人はいじめの対象になりやすいです。
自衛隊は連帯責任制ですので、グループに1人できない人がいると、全員が罰を受けます。その鬱憤晴らしにできない人をいじめるというのも珍しくないので、それぐらいの覚悟は必要でしょう。
18歳以上の中卒で自衛官になる場合
もし最終学歴が中卒でも18歳以上27歳未満であれば自衛隊に入隊することは出来ます。
一般曹候補生か自衛官候補生のどちらかを目指すことができます。
一般曹候補生は高卒レベルの学力が必要であり、自衛官候補生は中卒レベルの学力が試験の出題範囲です。
自衛官候補生は2年~6年の任期性であるため、簡単なレベルになっています。
もし定年まで働きたいのであれば、高卒レベルの勉強を頑張って一般曹候補生を目指すと良いでしょう。
ただ自衛官候補生として入隊しながら一般曹候補生の試験を受けることができますので、勉強との両立ができれば、先に自衛官候補生として入隊することもできます。
しかし厳しい訓練を受けながらの勉強は難しいので、定年まで働きたいなら勉強を頑張って一般曹候補生を受けたほうが良いでしょう。
高卒で自衛官になるには
高卒で自衛官になるには主に4つの道があります。
中卒でも受けることが出来る「自衛官候補生」と「一般曹候補生」。
また海上自衛隊や航空自衛隊のパイロットを目指して2年間学ぶ「航空学生」。
さらに自衛隊の幹部育成を目的として4年間学ぶことになる「防衛大学校」の4種類です。
一般曹候補生になる場合
一般曹候補生は前述した自衛官候補生を指導する立場に立つことを目標として育成を受けます。
自衛隊で一番低い階級は「士」であり、自衛官候補生の階級です。
一般曹候補生は最初から「士」の1つ上である「曹」から始まりますので、将来的には士を束ねる小隊長のリーダーとして働く人も多いでしょう。
ちなみに一般曹候補生で入隊し、幹部レベルまで昇進するには一般幹部候補生の試験を受験する必要があります。
ただ大卒レベルの学力が必要になるため、夜間や通信制の大学に通って勉強をする必要があると言っても良いでしょう。
一般曹候補生で幹部コースに乗るには、かなりの努力が必要です。
もし最初から幹部コースで進みたいのであれば、後述する防衛大学校に進学するか、一般の大学に進学して一般幹部候補生のどちらかの道を進むと良いでしょう。
ただどちらの道もそれなりに勉強が出来ないといけません。
航空学生になる場合
海上自衛隊・航空自衛隊のパイロットを養成するのが航空学生です。
海上は高卒の23歳未満、航空は高卒の21歳未満しか受けることができないため、基本的に高校を卒業してすぐか、大学や専門学校などの進学先を中退した若い人しか受けることができません。
そして航空学生として入れば、4年かけて幹部かつパイロットとして育てられます。
さらに学生という名称であるものの、特別職国家公務員として扱われ、月に約16万円の給料をもらえます。
試験は1次試験が筆記試験となっており、2次試験と3次試験は主に実技です。操縦適性試験があり、実際に航空機を操縦して適正を見られます。
筆記試験は最低限の学力があるかどうかのチェックですので、高卒程度の学力があれば問題ないでしょう。
実際に航空機を操縦して、何度かテストを繰り返しながら、徐々に上手くなっている事が確認できれば適正有りと判断されるという話もあります。
防衛大学校に進学する場合
一般の大学進学をするのではなく、防衛大学校に進学して、自衛官の道を目指す選択肢もあります。
防衛大のレベルは一概に言えないものの、九州大学レベルと揶揄されることも多いです。
防衛大学校は自衛隊の幹部を養成することを目的としており、将来は出世を約束されていると言っても過言ではありません。
また通常の大学とは違い、在学中に学費がかからないのはもちろん、給料も貰えます。航空学生と同じように特別職国家公務員という位置づけとなり、毎月約10万円とボーナスの支給です。
そして防衛大の卒業後は約1年で幹部に昇任します。
幹部への昇任は早く、最短で23歳の若さで幹部となるため、実務の経験が浅くても、下の階級である勤続年数の長い曹士に経験が劣ることに葛藤を感じる自衛官も少なくありません。
そのため防衛大に苦労して入学し、苦労して卒業し、幹部に承認したと思えば、また苦労して経験の差を埋める努力をしなければいけないでしょう。
防衛大に入ってしまえば、幹部への昇任は約束されたようなものですが、それは努力があってこその結果です。
現に防衛大に苦労して入学したものの、厳しさに絶えれず、途中で退学するものもいます。
ただそんな厳しい防衛大の生活を乗り越えることができれば、自衛隊としてはもちろん、人間的にも大きく成長できることは間違いありません。
大卒で自衛官
一般幹部候補生になる場合
一般幹部候補生になる場合は中卒・高卒でも受けられるが、学力は大卒レベルが必要です。
大学在学中でも20歳以上であれば試験を受けることが可能であるため、早いうちから試験を受けておくこともできます。
一般幹部候補生は名称通りに幹部への昇任を約束されている入隊コースです。
ちなみに一般幹部候補生の中には陸上自衛隊の音楽要員や海上・航空自衛隊の飛行要員も含まれていますので、大卒で音楽隊やパイロットになりたい場合はこの一般幹部候補生の入隊コースで受験すると良いでしょう。
入隊後は基本的に防衛大卒の幹部コースの人たちと同じ待遇となります。
歯科幹部候補生・薬剤科幹部候補生になる場合
歯科に関する専門の大学を卒業しているのであれば、歯科幹部候補生として自衛隊の衛生分野で勤務する歯科医官となることができます。
歯科幹部候補生も一般と同じように、大学在学中でも受験できますので、早めに挑戦しておくと良いでしょう。
薬剤科の場合も歯科と同じであり、薬学系の大学を卒業している場合は幹部候補生として受験することが可能です。
女性で自衛官になるには
最近は自衛官を目指す女性も増えています。
女性でも前述したように様々な方法で入隊することは可能です。女性だからと言って幹部候補生になれないということはありません。
しかし男女で募集人数に違いはあり、女性自衛官は男性よりもかなり狭い採用枠になりますので、自衛官になるのは難しいと言えるでしょう。
男性は基本的には誰でも入れるようなイメージですが、女性は何年も受験して入隊する人が多いです。
また女性だと配属される職種も制限されがちですので、希望する職種につけないということもありえます。
特に会計や補給などの後方支援の配置が多く、戦闘系の職種に配属されることはほとんどありません。
さらに化学系などの身体的に負担がかかるものや潜水艦などのプライバシー確保が難しいものだと女性自衛官の配置は制限されがちです。
ただ自衛官の中ではあまり負担がかからない仕事に回されることが多いものの、訓練時などは男性自衛官と同じように扱われます。
それなりにキツイ訓練があることは覚悟しておかなければいけません。
また医師や看護師などの専門的な職種となると、また採用口も変わってきます。
自衛隊で専門の仕事をできるようになるには
自衛隊への入隊を希望している人の中には、ただ自衛隊という役職がほしいだけでなく、明確にやりたい仕事を持って目指す人も多いです。
そこで今回は自衛隊の中でも専門の仕事と言える職種につくために必要なこともまとめてみました。
レンジャー
レンジャーは陸上自衛官に送られる資格の1つであり、最短で19歳から挑戦することが可能です。
レンジャーはかなり厳しい教育や訓練を乗り越えた自衛官だけがもらえる勲章であり、レンジャーバッジを持っているだけで自衛隊の中では一目置かれます。
何か有事があった際、少数精鋭の部隊が必要となった時に招集されるのがレンジャーです。
つまり陸上自衛隊の中でもプロフェッショナルな位置づけとも言えるため、レンジャーを目指して、厳しい訓練に挑戦する人も多いです。
過去には厳しい訓練に絶えきれずに脱走して停職処分になった自衛官もいれば、殉職してしまった自衛官もいるほど厳しい訓練となっています。
レンジャーの訓練には部隊レンジャー、幹部レンジャー、空挺レンジャーなどがあり、それぞれで訓練の内容は違いますし、女性自衛官は受けられません。
レンジャー訓練は5夜6日の間、飲まず食わず眠らずの訓練を行い、カエルやヘビを食べて飢えを凌がなければいけませんので、誰でも出来る訓練ではないでしょう。
長い期間を経て栄養失調状態が続くため、目の色素が落ちて灰色がかった目のまま、もとに戻らない隊員も多いです。
パイロット
自衛隊でパイロットになるためには3つの選択肢があります。
1つ目は前述した航空学生となって航空自衛隊に入隊する方法です。
2つ目は防衛大学に入学し、2年へ進級する時に航空要員としてパイロットを目指すこともできます。
3つ目は一般の大学を卒業し、幹部自衛官としての道を進んだ後に飛行準備過程を経ることでパイロットの道を目指すことが可能です。
ただ3つの方法のどれでも言えることですが、パイロットになるためには視力が必要です。
近距離視力が裸眼で1.0以上、遠距離視力が裸眼で0.2以上かつ矯正視力が1.0以上はないといけません。
要するに裸眼の時に老眼ではなく、裸眼で学校の身体測定による視力が0.2以上あれば基準を満たします。
またレーシックなどを受けている場合はその時点で不合格ですので、気をつけましょう。
空挺隊員
空挺隊員は陸上自衛隊に属する隊員であり、パラシュートやグライダーなどで降下し、戦局を変える歩兵です。
日本では千葉県の習志野にある第1空挺団のみとなっています。
空挺隊員になるには新隊員から適性検査を受けて配属されるコースもあれば、既に部隊配置された後に適性検査を受けて空挺隊員になるコースもありますので、希望をすればいつでも配属されるチャンスはあるでしょう。
しかし第1空挺団に属している自衛官の数が1,900名ほどしかおらず、その中に入るのはかなり狭い門となっています。
当然のことながら、体力があって成績優秀でないと配属されないと思ってもよいでしょう。
また空挺隊員には身体検査もあり、体力がいくらあってもダメなケースもあります。中には背骨が曲がっているだけで落とされることもあるようですので、半ば運も必要な配属先と言っても過言ではありません。
空挺隊員は空挺手当と習志野勤務による地域手当がもらえますので、給料もかなり高く、人気です。
ただ選ばれた自衛隊員たちですので、毎日の訓練は他の部隊よりも厳しいことは覚悟しておかなければいけません。
狙撃手
狙撃手になるには日頃の訓練における射撃の好成績やレンジャー資格などがあると声がかかりやすいと言われています。
また何時間も動かない訓練も必要です。
狙撃手は射撃と冷静に判断する能力が求められますので、特に階級による制限は無いとみて良いでしょう。
ちなみに自衛隊では狙撃手に隠密性は重視しておらず、味方部隊の指揮官を守ることを主任務としています。
日本は専守防衛を掲げているため、敵を撃つために潜り込ませるような行為は想定していないのでしょう。
広報官
広報官は自衛隊に入隊を希望している人の支援や自衛隊を退職した人の就職支援など自衛隊の入口と出口で支援活動を主にしている自衛隊員とも言えるでしょう。
他にも有事の際に要員派遣をしたり、部隊と行政機関をつなぐ連絡機関となったりなど事務的なお仕事をします。
広報官になるには特別な資格などは必要ありません。
次の配属先として希望することができますので、まずは希望してみると良いでしょう。
音楽隊員
自衛隊の音楽隊に入るにはかなりの技量が必要です。
自衛隊の音楽隊はこれから徐々に上達していく若い人よりも即戦力を欲しがっていますので、これまでにコンクールで受賞したことがある人などが多く入隊している現状があります。
また音楽隊を志望していても、最初の3ヶ月は自衛隊としての訓練を受けなければいけません。
音楽だけが出来るわけではないので気をつけましょう。
音楽隊で募集されている楽器は年度によっても違いますので、あなたが受験できない年度もある可能性があります。
音楽隊として入隊したい人用の説明会がありますので、まずはそこで今年度の最少状況について聞くと良いでしょう。
医者・看護師
自衛隊は自衛官の衛生面の支援を行うために、自衛隊病院を運営しており、医者と看護師の人員も募集しています。
医者と看護師はどちらとも2パターンによる採用の仕方をしており、まずは自衛隊の学校で医学を学ばせてから自衛隊員として本格採用される防衛医科大学校の学生募集が1つです。
防衛医科大学校は医師のコースと看護師のコースに分かれており、それぞれが医療の道を進むとともに幹部自衛官としても素養を培っていきます。
もう1つの方法として、すでに医師免許を持っている医師や看護師免許を持っている看護師は即戦力として募集しており、看護師は年齢制限が36歳未満です。
この2つの方法は既に免許を持っているか持っていないかの差でしかありませんので、今後自衛隊の病院で勤務したいと高校生のうちから決めているのであれば、学費が無料かつ毎月給料がもらえる防衛医科大を目指すと良いでしょう。
自衛隊員になるには様々な方法がある
自衛隊に入隊する方法は様々であり、あなたの学歴によって最適な入隊方法は違いますし、あなたがなりたい職種によっても進路の選び方が違うこともあります。
また1つの仕事でも様々なアプローチの仕方がありますので、自衛隊員は比較的やりたい仕事につきやすい職業とも言えるでしょう。
中には険しい道も多いですが、自衛隊はそれほど過酷な仕事であると同時に、体力や精神面を強く持っていなければ、自衛隊員になるのは難しいです。
強く自衛隊への入隊を希望しているのであれば、まずは募集要項などを取り寄せて、じっくり入隊するかどうか考えてみることをおすすめします。