パイロットは「誰でもなれる職業ではない」「お金もかかるし、目がよくないとなれない」というイメージが強いですが、実際にどうやってパイロットになるのかという方法まで知っている人は少ないのではないでしょうか。
パイロットにも様々な種類がありますので、ここでは職種ごとに、パイロットになるにはどのような方法があるのかを詳しく解説します。パイロットになるまでの具体的な方法とかかるお金に注目するため、これからパイロットになろうと考えている人や興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
パイロットになるには努力が必要
数ある職業の中でも、パイロットは特になるのが難しい職業だというイメージが強いでしょう。そのイメージは決して間違ってはいません。パイロットになるために必要な勉強はもちろんのこと、視力や健康など生まれ持った素質が大きく関わる職業です。
パイロットとして活躍するためだけでなく、進学する際にも厳しい身体検査が行われます。さらに、パイロットとして働き続けるためには、1年に1回行われる身体検査に合格し続けなければなりません。
パイロットは人の命を預かる責任感の重い職業であり、少しのミスが大事故につながるため慎重さや正確さに加え、健康に異常がないかがとても大切なのです。責任感や判断力などの能力は訓練である程度は身につけられますが、毎日の努力なくして健康で居続けるのは難しいですよね。
パイロットに向いているかの適性検査が厳しいことはもちろん、訓練と勉強によって責任感や正確さ、的確な判断力などを磨き続けなければなりません。パイロットになるために努力することは当たり前で、パイロットになった後も常に勉強と努力が必要な職業なのです。
パイロットになるには視力は必要?
パイロットと聞くと「視力がよくないとなれない職業」だというイメージが強いのではないでしょうか。実際に、パイロットは目がよくないとなるのが難しいと考えて間違いありません。パイロットになるには、視力に関して以下のような基準を満たす必要があります。
- 両目とも0.7以上の裸眼の遠見視力(5m離れたところから計測する視力)
- メガネを使用する場合・・・各レンズの屈折度が(±)8ジオプトリーを超えないメガネにより0.7以上に矯正されていること
- コンタクトレンズも可(多重焦点、カラーコンタクトレンズは不可)
- 屈折矯正手術はNG(レーシックなどのレーザーで視力を矯正する手術)
- オルソケラトロジー(手術なしで近視を矯正する治療法)による矯正NG
両目とも裸眼で0.7以上という数字は、現代人にとっては厳しい数字だといえるでしょう。文部科学省による平成29年度の調査によると、視力が1.0未満の小学生は32%、中学生は56%、高校生にもなると65%ほどだといいます。
この数字は過去最高で、現代の高校生以下の学生がパイロットになるには希望者の半数以上が視力に悩まされる可能性があるということです。現在の日本ではレーシックなどの視力矯正手術は認められていません。しかし、アメリカでは認められているため、今後日本ではどうなるかに期待がかかっています。
パイロットになるために必要な資格とは?
パイロットになるには、訓練時間やレベルによって取得する資格が変わります。パイロットになる第一歩として取得するのは「自家用操縦士」という資格です。これは自家用飛行機やグライダーを操縦するための資格で、旅客機は操縦できません。
自家用操縦士の資格をとり、飛行時間を積んでステップアップしていきます。次に取得するのは「事業用操縦士」の資格です。この資格を取得すると、お金をもらいながら飛行機を操縦することが許されます。
どんな職種にしろ、飛行機やヘリコプターを操縦してお金をもらうには事業用操縦士の資格が必須です。その後は訓練や勉強、経験を重ねながら「定期運送用操縦士」の資格をとります。
この資格を取得することが、一人前のパイロットとしての第一歩となります。定期運送用操縦士の資格を取得すると、機長として第一線で活躍できるのです。機長になるまでには早くて15年ほどかかるといわれています。
この期間中には、以下のような資格を取得しながら経験を積んでいきます。
- 航空無線通信士
- 計器飛行証明
- 多発限定免許
- 航空英語能力証明
これらの資格や免許に加え、1年に1回行われる「航空身体検査証明」に合格し続ける必要があります。
パイロットの種類によってなる方法は変わる?
パイロットとひと言にいっても、いろいろな仕事があります。
- 旅客機のパイロットになるには
- ヘリコプターのパイロットになるには
- 自衛隊員のパイロットになるには
- 海外のパイロットになるには
一番イメージしやすいのは、JALやANAなどの旅客機を飛ばす仕事でしょう。他にもプライベートジェットやドクターヘリ、戦闘機や物資輸送のヘリコプターなどがあります。以下では、どのようなパイロットになるかに焦点を当てながら、パイロットになる方法を詳しく見ていきましょう。
旅客機
高校卒業後の進路として旅客機のパイロットになるには、大きく分けて3つの方法があります。
①一般の大学を4年間で卒業し、航空会社のパイロット養成枠で入社
②航空系の専門学校へ2年通い、有資格者としてエアラインに就職
③一般の大学へ2年、航空大学へ2年通い、日系・外資系のエアラインへ就職
この中で最も金額が安く済むのが①です。普通の大学を卒業した後に航空会社にパイロット養成枠として就職すれば、資格や訓練などの費用はすべてエアラインが支払うため、ゼロからパイロットとして教育してもらえます。
②は専門学校でパイロットに必要な資格をとってから就職するため、即戦力として活躍できます。しかし、大手では有資格者の募集は少なく、格安航空会社(LCC)への就職が一般的です。
③はエアラインのパイロットを育てる専門の機関で、就職率は14年連続で100%を誇っています。一般の大学を2年以上、62単位以上修得していることが入学の条件ではありますが、就職に有利だといえるでしょう。
ヘリコプター
ヘリコプターのパイロットになるには、上記で紹介した方法で資格をとったり経験を積んだりするのが一般的です。ヘリコプターのパイロットは航空事業を行っている一般企業に就職して、事件や事故の報道や資料映像を撮影したり医療搬送や物資輸送をしたりする仕事もあります。
他には警察航空隊や消防防災ヘリコプター、海上保安庁のパトロールや航空自衛隊や海上自衛隊なども、ヘリコプターのパイロットになるひとつの方法です。警察航空隊は警察官の中から操縦士を採用していることもあります。その場合は、自家用操縦士や事業用操縦士の資格を自力でとった後に警察になるのが近道です。
自衛隊員
高校卒業後に自衛隊のパイロットになるには、以下の2つの方法があります。
①航空学生に入隊後、訓練を重ねて航空自衛隊か海上自衛隊のパイロットになる
②防衛大学に4年間通い、希望や適正によって海上自衛隊や航空自衛隊に入隊
これらふたつの方法は、飛行機のパイロットやヘリコプターのパイロットになるよりもお金がかからないのが特徴です。航空学生も防衛大学も「学生」ではあるものの身分は自衛隊員なので、勉強や訓練をしながら給料がもらえます。
寮での生活になるので、外出や娯楽以外の食事や住居の費用もかかりません。自衛隊の第一線でパイロットとして活躍するには4年ほどかかり、適性がなければ続けるのが難しく厳しい訓練をこなす必要があります。
海外
アメリカやカナダなどは土地が広大であることから、航空事業が日本よりも発達しています。そのため、パイロットを雇う企業やパイロット養成のスクール、大学などが豊富ですし、訓練で飛行機を飛ばすためにかかるお金も日本より安く済むことが多いです。
海外でパイロットとして活躍するために留学して資格をとるという方法もありますが、実際にエアラインなどに就職する際には労働ビザが問題になります。現地の企業でパイロットとしてエアラインで働くには、基本的に永住権が必要です。
ワーキングホリデービザは労働が認められていますが、ひとつの企業で働く期間に制限があることや滞在期間が1~2年と短いことから、エアラインのパイロットとして就職するのは難しいでしょう。
永住権が必要ないとしても、現地企業から労働ビザを取得するためにオファーをもらったり、英語力を証明したりする必要があります。海外でパイロットとして働くには、ライセンスや経験よりもビザの方が大きな問題となるでしょう。
パイロットになるのは簡単ではない
パイロットになるには様々な方法がありますが、決して簡単ではありません。勉強や訓練などによって必要な知識や技術を身につけるのはもちろん、視力や健康などの生まれ持った要素に左右されることも多いのがパイロットです。
資格をとってパイロットになれたとしても、努力を続けられなければパイロットとして活躍できません。訓練中に体を壊したりパイロットに向いていないとなったりすれば、そこで道が閉ざされてしまうハイリスクな職業でもあります。
だからこそ給料が高く憧れを抱く職業なのですが、パイロットになるのは簡単ではありませんし、大変な努力が必要な職業なのです。しかし、格安航空会社が増えていることや現役パイロットがこれから引退することを考えると、まだまだ需要が高く人気な職業であることに変わりはないでしょう。